親の家が空き家になると何が問題か?
50代以上の日本人の持家率は80%を超えています。
これは、長生きしている70、80代の親の家とは別に50、60代の子も持家があることを示しています。
ということは、いずれ親が亡くなり実家を相続した子が住む可能性はほとんどない、ということでもあります。
子が自分の家を持った時点から、実は空き家化は始まっているのです。
ところで、空き家とみなされるのは、どのような状態の家か、ご存じですか?
空き家の目安は、「概ね1年間を通して使用実績のないこと」です。使用実績は、電気・水道などが使用されていない、人が使っている気配がない、雑草や樹木が迷惑など近隣住民の指摘などから判断されます。
空き家は何が問題か
では、空き家は何が問題なのでしょうか?大きくは、4つあげられます。
1,環境悪化
たいていに一戸建てには庭があります。春、夏の季節には、数週間ほうっておくだけで、雑草が生い茂ります。樹木も定期的に刈り込まなければ見苦しい景観となり、周囲に不快感を与えてしまいます。また、隣地に枝葉が越境して迷惑をかけることも。
また、人が長期間足を踏み入れないと不法投棄、スズメバチなどの害虫、ネズミやイタチなどの害獣の繁殖の場となってしまいます。
そうした空き家の周辺の住宅が売りに出されると、買い手がつきにくく、不動産価格が下がり、資産価値が低下します。
2,不法者の侵入
家財道具や布団を置いたままの空き家には、不審者が侵入し、そのまま寝泊りしている、という事例もあります。
さらに怖いのは、小さな子を連れ込んでのいたずらです。
私の友人は北海道の実家を放置していたところ、高校生が物置から侵入し、たばこやシンナーを吸って、たまり場となっていたそうです。空き家は青少年の非行を助長することもあるのです。
3,放火
日本全国で発生する火事の5件に1件は放火によるものです。人の住んでいない空き家には、人の目がなく、枯草やゴミなどの燃えやすいモノが放置されているので、放火のかっこうの標的となります。
4,倒壊
空き家、空地相談のなかで、最も多いのは、老朽化した家が倒壊する危険性がある、というものだそうです。建物は使わなくなると急速に劣化します。日本の家は木造が多く、定期的な換気ができていないと、どんどん傷んでしまいます。親の家が、築30~40年というのであれば、要注意です。昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた家は、現在の耐震基準と比べると地震に弱く、低い震度の地震の揺れでも倒壊する危険性があります。
台風、雪の重みで倒壊する危険もはらんでいます。
このように、親の家を空き家のまま放置しておくと、いろいろな問題が発生し、周辺地域の住民の方々に多大な迷惑がかかることから、国は平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」告示しました。
周囲が迷惑な空き家には罰則が
この法律の主旨は、「空き家を所有する物は、周囲の迷惑とならないように、きちんと管理する義務がある」というものです。たとえ住む予定のない実家であっても、相続した者には管理する責任と義務生じるのです。
もし、管理をおこたり、前述のような問題が発生し、周囲が迷惑な空き家と自治体へ苦情を申し出ると、「特定空き家」とされます。自治体は、持ち主に対してきちんと管理するよう助言・指導、勧告されます。持ち主は指導、勧告を受けると一定の猶予期間を与えられ、その間に空き家を保全しなければなりません。もし、指導、勧告を無視してほうっておき、年をまたぐと、住宅用地特例の対象から除外され、固定資産税が高くなります。
ちなみに、小規模住宅用地(200㎡)では6分の1、一般住宅用地(200㎡を超える部分)では3分の1の減額がなされなくなります。また都市計画税も小規模宅地は3分の1、一般用住宅地では3分の2の減額がなされなくなります。
迷惑な空き家と特定されると、住んでもいないのに、税金の負担が増してしまうことになるのです。
それでも放置しておくと、市区町村長の判断により、持ち主に代って空き家を強制撤去するなどの強硬手段がこうじられることになるのです。
空き家は今や大きな社会問題です。親の家を空き家にしないための、対策を早い段階から考え、実行しておくことが大事です。
次回以降のコラムで順次お伝えしていきます。
(2018年1月9日)