老後破産を招くのは「病気」と「介護」
人生100年時代。老後破産を心配する方が増えています
まず気になるのは生活費です。
定年が延長されるなか、70歳まで働き続けて得た蓄えと年金で、老後30年間の暮らしがまかなえるのか、誰しもが不安に思っています。
夫婦2人にかかる30年間の生活費は1億80万円
世帯主が70歳以上の、世帯平均貯蓄額は2389万円(平成29年版高齢社会白書)です。また夫婦二人の年金額の平均は1カ月当たり約22万円(厚労省が発表しているモデル世帯における29年度の年金額)。いっぽう、実際にかかる生活費は1か月あたり28万円(「家計の金融行動に関する世論調査(平成29年)」のアンケート回答より)。
とすると、夫婦(同じ年齢として計算)が自宅で病気もせず、介護も受けずに、元気に暮らしているとすれば、100歳までの30年間にかかる生活費総額は1億80万円。年金総額は7920万円ですから、年金では賄えない赤字分の2160万円を貯蓄から取り崩していくことになります。30年後の貯蓄残高は、220万円。ぎりぎりセーフです。
が、現実には、100歳まで病気も介護も不要で暮らせる方は稀でしょう。いずれ、夫(妻)が、病気になって入院する、介護が必要になり施設へ入所するなど、暮らしに大きな変化が訪れます。治療費や入所費用が加われば、たちまち生活費は大幅に上昇し、老後破産に直面することになります。
老後破産を招くのは病気と介護
参考までに、必要な介護費用をシミュレーションしてみましょう。
東京都のデータによると要介護2になるのは男性82.5歳、女性は85.6歳。要介護2からの平均余命は80歳とすると男性6年、女性8年程度となります。
夫が82歳で要介護2になり民間施設へ入所したと想定します。施設は月額25万円かかります。妻は自宅で生活するので、別に月15万円ほどの生活費がかかる(家計調査より)ので、元気なうち28万円で済んだ生活費が40万円に増えます。
そしてこの妻も、86歳で要介護2となり同じように介護施設に入所すると生活費は月額50万円に跳ね上がります。
夫が施設に入って6年後に死亡すると、妻がもらえる遺族年金の額は約15万円程度に下がってしまいます。そして8年後に亡くなったとすると、かかる生活費は次のようになります。
*計算を分かりやすくするために、夫と妻は同じ年齢、夫82歳入所、88歳死亡。妻86歳入所、94歳死亡とします。
1、かかる生活費 9000万円
・夫婦が元気に自宅暮らし(70歳~81歳) 28万円×12か月×12年=3600万円
・夫が要介護2で施設、妻は自宅暮らし(82~86歳)(25万円+15万円)×12か月×5年=2400万円
・夫も妻も施設暮らし(87~88歳)50万円×12×2年=1200万円
・夫死亡、妻は施設暮らし(89~94歳)25万円×12か月×6年=1800万円
・合計9000万円
2、年金収入 6132万円
・70~88歳 22万円×12か月×19年=5016万円
・夫死亡 89~94歳 15万円×12か月×6年=1080万円
・合計 6096万円
3、預貯金 2389万円
4、収支 -479万円
2+3-4=6096万円+2389万円-9000万円=-515万円
このように収支はマイナスとなります。このシミュレーションでは、病気による治療費支出は計上していないので、現実にはより赤字は膨らむことが予想されます。
老後破産の危険は、実は病気や介護の問題につきるようです。
では、病気や介護の問題はどうすれば解決できるのでしょうか?
最期まで自宅を貫けば老後破産は避けられる
私は、最期まで自宅で暮すという覚悟を決め、そのために50代、60代から準備する。準備とは家事、人付き合い、運動の3つの習慣形成です。こちらについては私のコラムのバックナンバーをご覧ください。
3つの習慣を実践することにより、心身機能の低下をできるだけ遅らせ、病気にかからない、介護を必要としない暮らしを持続させることができます。そうすれば、治療費、入所費がかさむことはありません。また70代以上の持ち家率は80%を超えているので、自宅で暮しつづけている限りは、多くの人は住居費がかからないでしょう。
3つの習慣を実践することで、最期まで自立して自宅で暮らすことこそが、老後破産を防ぐ最も効果的な対策だと考えます。
2018年7月31日