老化を遅らせる「家事」の習慣
「最期まで自宅」を貫くには、老化を遅らせ老化第二段階(75~84歳がひとつの目安)に踏みとどまることが必要です。そのためには、「家事」「人付き合い」「運動」の3つの習慣のどれかひとつが欠けてもだめ。三位一体で形成していくことが大事です。
また、3つの習慣は若いころからのものとは異なります。老いを生き延びるためには、これまでのやり方を仕切り直し、新たな習慣形成が必要なのです。
では、まず「家事」の習慣形成についてご説明しましょう。
■「家事」の習慣はまず片付けから
生きることは家事をすることです。が、老化第二段階になると、手足が上がらず、物の上げ下げ、重い物の持ち運びが難しくなります。片づけやゴミだしができなくなり、多くの家でゴミ屋敷化が始まるのです。したがって緊急度が高いのは「片付け」です。老化第一段階のうちに片付けを徹底したいものです。片付けを仕切り直すための原理原則は3つ。①すべてのモノに定位置を決める。定位置が確保できないモノは使わないものから優先的に捨てる②使ったら元の位置に戻す。そのへんの床に置きっ放しはしない。③捨ててから買う、買ったら捨てるで、モノを増やさない。これをルール化することで片付けを習慣づけるのです。
ところで、収納スペースは誰もが重視しますが、ゴミ置き場やゴミ箱の配置は軽視されがちです。レジ袋をゴミ箱代わりにしているご家庭は以外に多いのです。仕切り直し片付けは、使わないものはスムーズに家から外へ出す(捨てる)ために、3つのゴミ置き場所の確保は必須です。3つのゴミ置き場所を経由して、3ステップ方式で不用なモノを家の外へ出す習慣を身につけましょう。
①よく使う部屋には、それぞれゴミ箱を置き、それらのゴミ箱にたまったゴミは
②台所にあるゴミ集積場の各分別ゴミ箱に振り分ける。台所には、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミなどの複数のゴミ箱を置くスペースを確保する
③さらに一戸建ての場合は勝手口の外に台所にあるゴミ箱より大きな各分別ゴミ箱を置き、回収日に備える
こうして家の中にモノが溜まっていくことを防止するのです。
■次に「料理」
人は食べるものでできています。老化第二段階に踏みとどまるための、新たな料理の習慣のための仕切り直し策は3つです。
①手軽な外食に頼らず、1日朝・夕2食、家で作って食べる。
家で食べることにより、1日単位で栄養バランスをはかる習慣をつけることが何より大切です。これで老化・生活習慣病を防止します。
②料理は外食では絶対的に不足する野菜中心。日本人が慣れ親しんできた、繰り返しに耐える和食を中心とするのが良いだろう。
野菜の調達のために、事前に献立を考える必要はありません。店先に並ぶ旬の野菜の中から、葉物、根菜、果物など1週間分(朝・夕計14食分)をまとめ買いします。旬のもの は、おいしく、栄養価も高く、しかも大量に出回るので安くてお得です。毎日同じものでは飽きてしまうのでは?という疑問もあるかもしれませんが、旬の野菜は数か月単位で入れ 替わっていきます。また、同じ種類の野菜・果物であっても、買うたびに味は異なるので、微妙な味の違いが分かるようになり、味覚も鍛えられていくように思います。
野菜は鮮度が命なので、1週間分の野菜は買った直後に下ごしらえします。面倒なようですが、毎回料理するたびに調理するより、かえってかかる時間は短縮できます。
蒸す(主に根菜類)、茹でる(主に葉物類)を中心に下ごしらえした野菜は、小分けして味噌汁の具、おひたし、サラダなどの使いまわします。
下ごしらえにかかる時間は2時間程度。買い出しとあわせると半日。1週間ごとの仕事として生活にはりができます。
③献立は夕食が一汁二菜。ご飯、野菜入り味噌汁、野菜料理、加えて魚の組み合わせ。朝食は一汁一菜。ご飯、野菜の具たくさん味噌汁、加えて卵、納豆など。
いずれも野菜や魚の種類を変えれば飽きることはありません。たとえば、野菜のおひたしでも、昨日がホウレンソウ、今日は春菊というように。
また献立を固定すると、手間がかからず料理への意欲が低下する老化第二段階においても料理の習慣が維持しやすいという利点がります。この段階に入ると出歩く範囲が狭まり生活 が縮小し、刺激の少ない単調な暮らしに陥ってしまいます。そうしたなか食は暮らしに変化をもたらし、生活に張りをもたせる有効な手段となるでしょう。
最期は「掃除」
掃除は家庭内体育へと仕切り直しましょう。1日20分程度の中強度運動を続けることで、長寿遺伝子のスイッチが入ることが実証されています(スウェーデン・カロリン研究所)。掃除で中強度の運動に匹敵するのは、床拭き、モップ・掃除機かけ、風呂掃除、庭の草むしり、家具の移動など(厚生労働省「身体活動のエクササイズ表」)。敬遠しがちな掃除の部類ですが、ウォーキングなどの運動と組み合わせることで、身体機能を老化第二段階に踏みとどまらせましょう。それでもいずれ老化第三段階に入り外出できなくなったとき、掃除の習慣が維持できていれば、体力に応じて、掃除機かけなどをやることで、体力、生活の質の維持の最後の砦となるのです。
(2017年12月30日)