家事を習慣づけるために住み方を変える
家事を習慣づける最大のコツは、住まいの動線を単純にすることです。
生活の場を1階に集約し、ワンルーム化する
一戸建てに住んでいる人は、生活の場を1階へまとめてすまうことをお勧めします。理由は広すぎて管理しにくいからです。老化が進み、身体機能が衰えるほどに、管理できる範囲は縮まっていきます。
そのうえで、すべてが見渡せるように1階をワンルーム化するのです。私は、できることなら多少の費用をかけて、リフォームし、ワンルーム化することをお勧めします。
動線を短く、全体が見渡せるのが、片付けには効果的だからです。
あちらこちらに置きっぱなしのモノが目に入りやすくなるので、元の定位置に戻そうとする力学が働きます。
また、料理にとっても見渡せることは有効です。
暗くて狭い台所で、孤独に料理するのは気が進まないもの。居間の一部が台所になれば、楽しく料理ができます。
掃除も同様です。部屋全体が一続きであれば、掃除機かけも、床拭きもとてもスムースで楽になります。
食事、排泄、入浴の生命維持動線をスムーズに
いずれ老化は進み、最晩年は生きるために最低限必要な食事、排泄、入浴が1日の生活のすべてとなる日が訪れます。それを見越して、できれば、老化第一段階のうちに、ダイニング・キッチン、トイレ、浴室の水回りの位置を隣接させ、使い勝手を良くしておくことが大事です。また安全を考慮し、炎の出るガスからIHクッキングヒーターへ、照明スイッチは一箇所に集約するなどの工夫もできればやっておきたい。老化第二段階に入れば、新しい設備の使い方に慣れずに混乱が生じ、使わずじまいになることもあります。入浴、排泄ができなければ、自宅では暮らせません。自宅で長く暮らすためには、使いやすい間取り、設備を早い段階から準備し、使いこなして慣れておくことが大事です。老化第三段階に入って、物忘れが増えてきても、長い間慣れ親しんできたことは、やり続けることができるのです。
ゴミ置き場を確保する
台所には、家庭内のゴミを集めて分別するためのゴミ箱置き場所、勝手口の外側に、回収までのゴミ待機のための分別ゴミ置き場の確保も必要です。
収納スペースを減らす
また、この機会に、思い切って収納スペースを削減することも必要です。階段下の収納、床下収納、天袋、小屋裏収納などは、足腰が弱くなってくると、モノの出し入れができなくなります。その結果、多くのモノが使われることなく死蔵品化してしまいます。そうならないうちに、封印してしまいましょう。
よく使うモノは、腰から胸の高さまでの、取り出しやすいところに収納しましょう。モノの出し入れがしにくいと、ついそのあたりに置きっぱなしになってしまい、片付きません。
あえて、バリアフリー化はしない
そして、バリアフリーにはあえてしないでおきましょう。
1階をリフォームするついでに、老化を見越してバリアフリーにし、床の段差をなくす、という考えもありますが、それはあまりお勧めできません。
個人差はありますが、まだ足腰が丈夫なうちは、段差は足をあげる運動の良いきっかけとなり、身体機能の維持を日常的に支えてくれます。バリアフリー化は準備だけしておき、いいいよ足があがらなくなってきた、と自覚したときにやりましょう。ただし、転倒防止のため、段差のあるところには、手すりはつけておいたほうがいいでしょう。
住み方を大幅に変えるのは老化第1段階までに
こうした住み方の大幅な変更は、まだ健康年齢の範囲にある、老化第1段階(65~74歳)までにやっておきたいものです。老化第2段階(75~84歳)にはいると、身体機能の衰えとともに、生活環境の変化に適応する能力も低下していきます。今まで慣れ親しんできたことは継続できても、新しいことやモノをうけいれるには、大きなストレスが伴います。これが嵩じると、鬱になったり、認知症が発症したりすることもあるのです(85歳以降の老化第三段階では、もはや何も変えてはいけない)。
老化第二段階に何とか踏みとどまり、自宅で最期を迎えるための準備は、65歳からはじめても、決して遅くはないのです。
(2017年12月31日)