「家の形態」が利活用のしやすさを左右する
立地ほどではありませんが、「家の形態」も利活用に相当の影響を及ぼします。
形態とはマンション、一戸建てという種別や築年数、広さなどです。
マンションのほうが「売る」「貸す」がしやすい
一般的には一戸建てよりマンションのほうが、売る、貸すともにしやすいとされています。それはなぜでしょうか?
答えは「マンションは便利な立地に建っている」「買って安心な建物かどうかの判断がつきやすい」からなのです。前回のコラムで解説したように、家の価値は8割がた立地です。大都市、地方都市に限らず、マンションを利便性の高いところに建てられることが多く、買い手、借りてがつきやすいのです。半面、一戸建ては住環境が優先されるため、バスを利用したり、郊外に建てられる傾向があり、需要がつきにくいのです。
中古住宅の買い手、借りてはおおむね20~40代の夫婦とも働きで子供が小学校入学前というファミリー世帯が主流です。大都市ではこれに30~40代の単身世帯も加わります。こうした人々は多忙なため、通勤時間が短縮できて、買い物などの日常生活が便利なところに住みたがるのです。結果としてマンションのほうが利活用しやすいということになります。
古ければ古いほど売りにくい
空き家は築35年超の古いものが全体の3分の2を占めています。
「売る」ときに築年数はどんな影響を及ぼすのでしょうか?
まずは、価格です。
木造一戸建ては築年数により建物の価値評価が変わります。新築を100とすると、築3年では70、築10年超で50、築25年超では0とみなされ、土地だけの価値となってしまいます。また、歳月をかけて育てた樹木や立派な灯篭、池のある素晴らしい庭であっても、よほどのことがないと売り出し価格に反映されないのが、実状です。
また、昭和56年以前に建てられた築34年超の一戸建て、マンションは現在とは異なる耐震基準で建てられているため、地震に強いとはいえません。こうした家も特に東日本大震災以降、敬遠されるようになりました。
古い家を貸すにはリフォーム代がかかる
「貸す」場合も築25年超の家は水回りや床・壁が劣化し、汚い、使い勝手が悪いという理由で、リフォームの必要があります。トイレ、浴室、キッチン設備入れ替えには約150万円ほどかかります。地方の安い賃料では、リフォーム費用を家賃で回収することが無理な場合みも多いようです。
広ければ利活用がしにくいことも
特に地方の郊外に建つ一戸建ての場合、土地が60坪以上、建物の床面積が200㎡前後、間取りは5LDKといった広いものがあります。
日本はどんどん小世帯化が進行しています。平均世帯人数は平成27年には2.5人を下回りました。かつて標準世帯といわれた4人家族世帯は減少し、単身世帯が一番多いというのが現実です。家族が少なければ、必要な部屋数も少なくてすみます。単身世帯なら1LDK,夫婦のみ世帯なら2LDK,夫婦と子供一人世帯なら3LDKで十分ということになります。こうして広い親の家と実際に借りたい、買いたい人との間にミスマッチが生じるというわけです。
いかがでしょうか?、あなたの親の家の形態は、利活用しやすいようになっていますか?だいぶイメージができ始めたのでは?
それでは、次のコラムでは、もう少し突っ込んで、親の家を「売る」と想定して、その程度の不動産力があるのかを実践的に見ていくことにしましょう。
(2018年1月18日)