暮らすなら「そよ風」を感じるところに

私は、年2回、夏と冬にそれぞれ4,50日程度、ハワイのホノルルで暮しています。

そろそろ4年近くが経ち、ここでの暮らしにもようやく慣れてきたので、ハワイの暮らしについて私が感じたことを、お伝えしたいと思います。

ハワイ移住を検討している人だけではなく、旅行で出かける人にとっても、これまでとは一味違う、ちょっとハズしたハワイの奥深さや良さを知っていただければ嬉しいです。

 

ハワイの最大の魅力は貿易風という名の「そよ風」

ハワイ暮らしの最大の良さは、気候。もっと具体的にいえば、貿易風につきると思います。

ホノルルの空港に降り立ったとき、花の香りを含んだ何ともいえない心地良いそよ風が出迎えてくれますが、あのそよ風が貿易風です。

夏のホノルルは、気温は30度を超える日が多く、湿度も80%前後の日があり、数値の上では決して快適とはいえません。が、実感値は爽快!ひとえに貿易風のおかげです。

ハワイでは家のリビングではなく、庭や公園などで人々がリラックスしている光景は珍しくありません。涼しいそよ風と冷たい飲み物があれば、扇風機もエアコンもなくとも、快適に過ごせるのです。

いまどき、1年中エアコンなしで快適に暮らせるなんて、世界中で一番贅沢なことではないでしょうか。

 

では、ハワイ・オアフ島ならどこでもそよ風の恵みが得られるかといえば、そうではありません。

オアフ島では年間を通じて貿易風は北東から吹いています。したがって、島の北東側では湿気を含んだ貿易風が丘陵地帯にぶつかるため雨が多いのです(その分熱帯の植物がよく育ちます)。南西側は乾燥して、そよ風が吹き晴れの日が多くなります。オアフ島のリゾートが島の南側や西側に多いのはこのためです。降水量が多くなる11月から3月にかけての時期にもワイキキのお天気がよいのは貿易風のお陰なのです。

ということで、オアフ島であればコオリナ、カカアコ、アラモアナ、ワイキキ、カハラ、などの地域は地理的には、そよ風に恵まれているといえるでしょう。

ただし、住んでみて分かったことは、そうした地域すべてがそよ風の恵みを享受できるとは言い難い、という実態です。

 

ワイキキ中心、アラモアナから「そよ風」は消えた?

主な原因は超高層コンドミニアム、ホテルの林立だと想像されます。

超高層のビルが建て込むと風通しが悪くなります。また隣棟間隔が狭いと相互の視線を遮断するために、窓は閉ざしがちになってしまいます。閉めきった部屋は暑いので、エアコンを常時つけた暮らしになり、各住戸の室外機からは温風が吐き出され、戸外の温度を上昇させます。加えて地面のアスファルトの照り返しにより、周辺の温度は更に上昇します。

超高層コンドミニアムが立ち並ぶワード・カカアコエリア(この先15年で20棟が立ち並ぶ予定)やアラモアナショッピングセンターを中心にコンドミニアムが立ち並ぶアラモアナエリア、ホテル・コンドミニアムが密集するワイキキ中心部のカラカウア通り沿い、クヒオ通り沿い、を日中しばらく歩けば、熱中症にかかる恐れもあるように思います。

今後、こうした地域は更に開発計画があり、どんどん都市化していき、ハワイの最大の魅力であるそよ風からは、残念ながら遠のいていくのでしょう。

ダイヤモンドヘッドのふもとに広がるカピオラニ公園

GOLD・COASTで「そよ風」を感じる暮らしを

そこで、提案です。

もし、ハワイに滞在するのであれば、多くの日本人にとって馴染み深い、便利なアラモアナ、ワイキキ中心エリアのコンドミニアムやホテルをあえて外してみてはいかがでしょうか?

私のお勧めは、ワイキキ中心からちょっと離れた(徒歩20分程度)、ダイヤモンドヘッドのふもと。地元のひとがGOLD・COASTと呼ぶ地域です。

この地域は、50年超前に建てられた古いコンドミニアム・ホテルが立ち並ぶエリアです。当初は白人しか住めなかったところですが、現在は多様な人たちが暮らしています。

ここに建つコンドミニアムのほとんどが、エアコンを設置していません。

なぜなら、ここでは、そよ風の恵みを享受できる快適な暮らしが、昔から今日にいたるまで続いているからなのです

GOLD・COAST地域には、地元の家族づれに人気のあるカイマナビーチ以外にもひなびた、訪れる人も少ない小さなビーチが点在しています。また、背後にダイヤモンドヘッドを控えた広大なカピオラニ公園に隣接しています。まさにオールド・ハワイアンの風景が広がっているのです。

そよ風はダイヤモンドヘッドを超え、広大な公園を渡り、海へと抜けていきます。

この風はこの地域で散歩、ランニングする人、ピクニックする人、ヨガ・水泳・サーフィンを楽しむ人々の気分をリラックスさせ、笑顔にする効力を持っています。

ところで、この地域では今後新たに建てる、あるいは建て替える建物については、ヤシの木の高さを超えてはならない、という開発規制がかかっているのです。つまり、現在15階程度の高さの建物は建て替えると6,7階建てに減築するしかありません。ということは事実上、建て替えは不可能。築50年超が100年超になっても、修理をしながらだまし、だまし使い続けるしかない、というわけです。また、新しく建てるにも余分な用地はありません。したがって、将来にわたり都市化することはなく未来永劫、そよ風と共に暮らすことができる可能性が高いというわけです。

GOLD・OASTの例にならえば、エアコンの室外機の有無をチェックすれば、そよ風感じるところか、否かが分かるというわけですね。

 

貿易風が減少している

貿易風について、ひとつ補足を。

実は1970年以降、この貿易風は28%も減少しているとのこと。原因は不明です。そのことで懸念されているのは次のようなことです。

ハワイ島のキラウエア火山から出る二酸化硫黄によって産み出された風がホノルルにまで立ちこめ、白や茶色の「もや」を残すことがある。これは、喘息やその他の呼吸器系の病気に影響する可能性がある。

また、雨が降らなくなり、水不足となれば、森林の維持や、農作物へも悪影響を及ぼす。

そして何より、心地よい「そよ風」目当ての観光客が減少すれば、ハワイ最大の産業である観光業を衰退させることになってしまう。

ことほど左様に貿易風はハワイにおいて重要な存在なのです。

(2017年12月7日)

 

 

 

 

 

 

 

 

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2020年10月23日号 週刊朝日 「空き家の守り方」

2020年4月2日号 女性セブン 「60才を過ぎたら住み慣れた自宅を売ってはいけない」

2020年2月22・29日号 週刊現代「最後まで自宅を売ってはいけない」

2020年2月14日号 週刊朝日 「コスパで選ぶ『終の棲家』

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2019年4月5日号  週刊朝日 「高齢者でもはじめられる元を取るリフォーム術」

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第3回

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2019年1月22日号 住宅新報 「ひとり暮らしを創造する中 『家事』『人付き合い』『運動』を促す家に」

2019年1月15日号 住宅新報 「ひとり暮らしを創造する上 良質なコミュニティで “自由”を謳歌」

2018年12月20日 夕刊フジ 「定年後難民にならない生き方 空き家になった親の家 どうする」

2018年11月号 エクラ 「夫の定年 人生どう変わる? 住まい編」

2018年12月号 ハレヤカ「最後まで自宅でひとり」を貫くための住まいと暮らし

第2回

2018年10月号 ハレヤカ 「最後まで自宅でひとり」を貫くための住まいと暮らし

第1回

2017年夏号  マンションスタイル 「資産活用研究所 『これから賃貸を考える人が知っておきたいこととは?』」

2017年11月24日号 週刊朝日「最期まで自宅でひとりを貫くためにするべきこと」

2017年11月10日号 週刊朝日「老化に負けない家事術」

2017年11月号 月刊ビッグ・トゥモロウ「住み続けても人に貸しても資産価値が上がる住居の選び方」

2017年10月27日号 週刊朝日 「外しの京都」

2016年10月14日号 週刊朝日 実家の持ち家は“ヤバイ”

2016年8月13.20合併号週刊ダイヤモンド「実家の大問題」

2016年7月23日・30日・8月6日 朝日新聞 be 知っ得なっ得 空家の相続1・2・3

2016年7月18日号 週刊住宅 2015年度「首都圏優秀マンション表彰」

2016年3月31日 リーフィアな暮らし  マンションライフの魅力を探る

2015年6月27日号 週刊ダイヤモンド 「ライフスタイルに合った住まい選び」

(最近のTV・セミナー・シンポジウム出演)

2017年10月21日 三菱地所レジデンシャル・住まいカレッジ トークセッション「三菱地所のものづくりのこだわりについて」

2017年3月29日、4月15日 3住み推進研究会主催シンポジウム「変わる家族と住まいのかたち」

2017年2月3日 RJC新春トップセミナー 「どうする?親の家の空家対策」

2017年1月10日 NHKクローズアップ現代「モノ屋敷の実家は宝の山 転売で解決 人生のお片付け」