どうする?親の家の空き家

日本の空き家の総数は820万戸(平成25年度住宅・統計調査総務省)。向こう三軒両隣のうち1軒、つまり6軒に1軒は空家、というわけですから、いまや誰にとっても身近な問題といえるでしょう。とりわけ、親の家を相続したけれど、すでに自分の家は別のところにある。でも、手離すのも近所や親戚の手前憚れる。したがって小教区的に空家状態。そういった背景を抱える?木造の一戸建てが実は220万戸と最も多く、これが社会問題化しつつあるのです。

きちんと管理しない空家は迷惑!

住まない家はすぐに傷みます。台風で屋根が吹き飛ばされる、地震で倒壊する、樹木の枝葉が隣地に侵入する、害虫がわく、放火の危険性が高い等々、周辺におよぼす被害は相当なものがあります。

そこで国は迷惑な空家に対して、「空き家等対策の推進に関する特別措置法」という法律を施行しました。この法律の主旨は、持ち主は周囲に迷惑をかけないよう自分の家をきちんと管理する義務がある。ほったらかしにして管理義務を怠れば、相応の罰則を適用するというものです。

どんな罰則規定があるのでしょうか。

1年間ほったらかしにしていて、倒壊の危険、衛生上有害、景観を著しく損なうなどの迷惑な空家については、「特定空き家」とされ、自治体は持ち主に対してきちんと管理するよう、助言、指導、勧告します。それを無視してほうっておくと、固定資産税の額が高くなってしまいます。それでも、ほうっておくと、強制的に解体されてしまうのです。

そうならないように、きちんと管理しようとすれば、住んでいなくても、固定資産税、電気・水道代、外壁の補修費用、樹木の剪定、管理費(マンションの場合)などで、年間50万円程度の出費を覚悟しなければなりません。

300万円の売り空家(広島県竹原市)     1971年築6DK,土地面積360.44㎡

誰も住まない親の家は売却するほうが良い

家は大事な社会資本です。住まない家は住みたい人に譲り、活用してもらうことで、土地や建物は存在価値を発揮します。私は住まない親の家はできるだけ、早く売却するのが一番だと考えます。

親の家を手離すのは忍びない。人に貸そうかどうしようかと迷っているうちに、2,3年空家状態。ということも。気持ちはとても良く分かります。が、たいていの場合、親の家は古くて、貸すには台所、浴室などの水まわり設備を交換する必要が生じます。費用は200~300万かかることも。これだけの投資金額を家賃で回収するのは、高い家賃がとれる大都市中心部の家など限られています。また、家主業は不動産ビジネスですから、相応の知識も必要で、素人には荷の重いことです。ということから、私は売却をお勧めする次第です。

地域活性のために、空き家を転用する動きが活発化

ただし、歴史的な建造物だから、それを地域の観光資源として生かすために、旅館にする、レストランにする。地域住民にとって必要な老人介護施設、保育所などへ転用することで新しい価値を創造する、という空家活用は大いに賛成です。素人の家主さんがNPOなどの専門家集団に、固定資産税程度の賃料で、土地・建物を貸す。専門家集団はその家を使用目的に応じて、リノベーションして事業を運営する。家主さんは維持管理費を負担する必要がなくなる。専門家集団は資金が少なくても事業が立ち上げられる。双方に利点のある空家転用のひとつの方法です。

こうした動きは住宅のリフォーム工事費の増加を見ても顕著です。工事費受注高は平成24年度以降継続して増加しており、特に28年度は前年度比37,6%の増加。背景には、一戸建て住宅を保育所や老人ホーム、ホテルや旅館などに転用する動きがあります。

ただし住宅から他の用途への変更には、建築基準法の壁が立ちはだかっています。基準を満たすためには、大掛かりな工事と資金が必要となり、転用が進みません。そこで国は、建築基準法を見直し、地域のニーズにあった建物への用途変更をしやすくするよう、現在検討中です。実現すれば、更に空き家活用が活発化するでしょう。

(2017年11月29日)

『最期まで自宅』で暮らす60代からの覚悟と準備
 最期まで自宅で暮らすことを望む人は多数いますが、実際には日本人の1割しか、その望みを果たせていません。
では、どうすればよいのでしょうか?
本書は、まず自宅暮らしができなくなる自立限界点に達するまでの、老化の進行段階を解明しています。そのうえで、自立限界点の手前で踏みとどまるための実践方法を、4つ提案しています。
①何としても自立限界点を超えない覚悟をする
②3つの習慣「家事」「人付き合い」「運動」を実践する
③便利で安全に暮らすために早めに住まいを変える
④地域のつながり、身近な行政を自分の味方につける
自分の老いを直視しながら、自分らしく自立した暮らしを長く続けたい方にとって、役に立つ実用的な内容になっています。
2020年1月20日発行 主婦の友社 定価1500円

<strong>(講演予定)</strong>

2018年2月18日午後1時30分~2時30分 大分市「どうする?親の家の空き家問題」

2018年2月19日午前10時~11時 竹田市「どうする?親の家の空き家問題」

<strong>(最近のメディア掲載実績)</strong>

2021年2月12日号 週刊現代「安易に家を売って、」知らない土地に行かないほうがいい」

2020年10月23日号 週刊朝日 「空き家の守り方」

2020年4月2日号 女性セブン 「60才を過ぎたら住み慣れた自宅を売ってはいけない」

2020年2月22・29日号 週刊現代「最後まで自宅を売ってはいけない」

2020年2月14日号 週刊朝日 「コスパで選ぶ『終の棲家』

2019年11月23日 NIKKEIプラス 「暮らし探検隊 空き家の片付け手伝ってみた」

2019年4月5日号  週刊朝日 「高齢者でもはじめられる元を取るリフォーム術」

2019年2月号  ハレヤカ 「最後まで自宅でひとり」を貫くための住まいと暮らし

第3回

2019年1月29日号 住宅新報 「ひとり暮らしを創造する下 親が60歳台から家族で片付け」

2019年1月22日号 住宅新報 「ひとり暮らしを創造する中 『家事』『人付き合い』『運動』を促す家に」

2019年1月15日号 住宅新報 「ひとり暮らしを創造する上 良質なコミュニティで “自由”を謳歌」

2018年12月20日 夕刊フジ 「定年後難民にならない生き方 空き家になった親の家 どうする」

2018年11月号 エクラ 「夫の定年 人生どう変わる? 住まい編」

2018年12月号 ハレヤカ「最後まで自宅でひとり」を貫くための住まいと暮らし

第2回

2018年10月号 ハレヤカ 「最後まで自宅でひとり」を貫くための住まいと暮らし

第1回

2017年夏号  マンションスタイル 「資産活用研究所 『これから賃貸を考える人が知っておきたいこととは?』」
<p style="text-align: left;">2017年11月24日号 週刊朝日「最期まで自宅でひとりを貫くためにするべきこと」</p>
2017年11月10日号 週刊朝日「老化に負けない家事術」

2017年11月号 月刊ビッグ・トゥモロウ「住み続けても人に貸しても資産価値が上がる住居の選び方」
<p style="text-align: left;">2017年10月27日号 週刊朝日 「外しの京都」</p>
<p style="text-align: left;">2016年10月14日号 週刊朝日 実家の持ち家は“ヤバイ”</p>
<p style="text-align: left;">2016年8月13.20合併号週刊ダイヤモンド「実家の大問題」</p>
<p style="text-align: left;">2016年7月23日・30日・8月6日 朝日新聞 be 知っ得なっ得 空家の相続1・2・3</p>
<p style="text-align: left;">2016年7月18日号 週刊住宅 2015年度「首都圏優秀マンション表彰」</p>
<p style="text-align: left;">2016年3月31日 リーフィアな暮らし  マンションライフの魅力を探る</p>
<p style="text-align: left;">2015年6月27日号 週刊ダイヤモンド 「ライフスタイルに合った住まい選び」</p>
<strong>(最近のTV・セミナー・シンポジウム出演)</strong>

2017年10月21日 三菱地所レジデンシャル・住まいカレッジ トークセッション「三菱地所のものづくりのこだわりについて」

2017年3月29日、4月15日 3住み推進研究会主催シンポジウム「変わる家族と住まいのかたち」

2017年2月3日 RJC新春トップセミナー 「どうする?親の家の空家対策」

2017年1月10日 NHKクローズアップ現代「モノ屋敷の実家は宝の山 転売で解決 人生のお片付け」