町に子育てを手伝ってもらうという発想
厚生労働省は12月22日、2017年の人口動態統計の年間推計を発表しました。
国内で生まれた日本人の赤ちゃんは94万1千人で、100万人を2年連続下回りました。
統計の残る1899年以降、最小を更新する見通しとのこと。
出生数減少の要因のひとつは、婚姻件数の減少です。2017年は60万7千組で戦後最小を更新すると予想されます。
加えて、晩婚化により出産する女性の年齢が高くなったこと。子育てや教育にお金がかかりすぎると感じていることから、第二子、第三子を産む人が減っているのです。
国は安心して子供を産めるように保育所の整備や就労支援に力を入れていくとしていますが、実際のところはどうなのでしょうか?
子育ては3つの資源をフルに使いこなす
子育てを支えるには3つの資源、「制度資源」「家族資源」「地域資源」が必要です。この3つの資源を、使えるものは、なんでも使うという作戦が大事と大月敏雄氏は自身の著書「町を住みこなす」で提唱しています。
子育ての「制度資源」としては、国は保育所、幼稚園、認定こども園、地域型保育などの施設、入園料・保育料の助成、医療費補助などを用意しています。ただし順番や運に頼ってしか利用できなかったり、個人の収入によっては利用できなかったり、そもそも住んでいる地域にはこうした制度資源がない、ということもあります。
そこで必要となるのが「家族資源」です。が、核家族が当たり前の世の中ですから、子育てを手伝ってくれる家族は同居していないことがほとんどです。地方に住む妻の両親を呼び寄せ近居、という選択肢もありますが、そう簡単にはいきません。かといって、近くに住む夫の母とは嫁姑の問題もあり、お互い仲良く面倒見合いましょう、というのは難しい場合もあるでしょう。加えて夫婦共働きが当たり前の時代です。妻も夫も子育てにさく十分な時間を持てないのが現実です。
子育ての困りごとは町に助けてもらう
そこで重要になってくるのが「地域資源」です。子供は人の手を借りずには、生きていくために最低限必要な食事・排泄・入浴すらできません。加えて、病気や怪我といった不確定要素のかたまりです。子育てとは、突然の困りごとに対処しつづけること、といえなくもありません。そして対処するには、夫婦の力だけでは不可能です。そこで、遠くの親族ではなく近くの他人に頼る必要が生じてくるのです。にもかかわらず、大都市で暮す自立した成人は、自力で生活できているため、町(町の人)に助けてもらう、という発想がそもそもありません。どちらからというと近所付き合いは面倒と避けがち、というのが一般的かと思います。したがって、ついその延長線上で、子育てを自己完結しようと考えれば、無理!にきまっているのです。子供を産むと決めたときから、子育てを町に助けてもらおう、という発想に切り替えることが、子育ての第一歩ではないでしょうか。
では、子育てのどんな困りごとに、町は対応してくれるのでしょうか?
・子どもの預かりなどの援助を受けることを希望する人と、援助を行うことを希望する人との相互に助けあう活動を支援する「ファミリー・サポート・センター」
支援内容としては、保育園や幼稚園、学童クラブなどへの送り迎え、その前後の預かり、産前産後の保育等サポート、保護者の通院等、外出する際の預かりなど
・急用ができたときに子供を預かってくれる「一時預り」、冠婚葬祭・病気などで保育ができなくなったとき、数日間預かってくれる「ショートステイ」
・急な残業で平日の夜間保育ができないときの「トワイライトステイ」などを頼める
・子供が病気になったときに世話してくれる「病児保育」
・放課後の小学生を預かってくれる「学童クラブ」など
こうした支援で使えるものはすべて使って、子育てを乗り切っていきましょう。
町の人に子育ての相談相手になってもらう
更に、こうした支援を担う人との付き合いを深めることにより、身近な相談相手ができれば、心強いことこの上なしです。
代表的な担い手としては次のとおりです。
・民生委員 厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行う人で「児童委員」を兼ねています。児童委員は地域の子供たちが元気に安心して暮らせるように、子供たちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援を行います。
したがって、困りごとの解決をどこに頼めばいいかなど皆目検討がつかない場合は、まず民生委員に相談するのが一番です。
・子育て支援委員 2015年度より国が新しく設けた制度で、主に子育て経験のある主婦を中心に子育ての仕事を担う認定制度で、講習を受ければ資格取得ができます。主に保育園での保育士の補助、学童保育施設での補助業務、ファミリー・サポート・センターでの援助を行う人です。
・子育て支援ボランティア(子育てサポーター) 子育て交流サロンなどの会場や、前述のファミリー・サポート・センターなどで、無報酬でお手伝いをする人です。
自分の町の支援内容を知る
ところで、地域の特性に応じて、子育て支援の種類や内容は異なります。町独自の支援もあれば、利用したいけれど、ない支援もあります。あなたの町の広報誌をこまめに読むことで、子育て支援の状況を把握しましょう。また、地域によっては、福岡市のように子育て情報を一つにまとめた「ふくおか子供情報」といったインターネットサイトもあります。こうしたサイトの存在も調べていきましょう。
平成31年度までは国が定めた「子供・子育て新支援制度」により支援が充実していく流れがあります。そうした新しい動きを知り、使えるものは何でも使って子育て力を高めていきましょう。
(2017年12月26日)